合成ジャイロ (Composite gyro)


 現在研究室の歩行ロボットには 姿勢センサとして角速度ジャイロと傾斜計がつまれていました。 しかし、このジャイロは線加速度の影響を受けやすく、 歩行によって生じる振動がノイズとして信号に混入するという問題点がありました。 そこで、振動に強そうなジャイロとして村田製作所製の 三角柱振動型ジャイロを使用することを検討しました。 これはカーナビゲーションやビデオカメラの手ブレ補正用として 用いられているものです。
 カタログを調べると、カメラ用のものとカーナビ用の ものと2種類あり、それぞれ、目的に適した特性になってました。 カーナビ用はドリフトが少なく、カメラ用は応答範囲が 広くなっています。が、カーナビ用の応答範囲は ロボットの制御には若干狭く、また、カメラ用のものの ドリフトは結構大きなものでした。そこで、これらを 組み合わせて、歩行ロボットに用いるのに十分な 安定性と応答性をもった信号を得ることを目的とした研究が 小川によってなされました。
 ドリフトを低周波数域での特性、応答性を高周波数域での 特性と考え、カーナビ用から低周波数域のの信号、 カメラ用からより高い周波数域での信号をとりだし、 加算することで合成する、という方法をとりました。 このような場合にハイパスフィルタとローパスフィルタと 加算を用いるという方法が知られていますが、 シャープなフィルタを使おうとすると、複雑なフィルタ対を つかわなければ、信号を切替える周波数付近で特性に 乱れが生じます。なめらかに切替えるためには
    
という条件が要求されますが、これをみたすフィルタ対を つくるのは面倒です。また、設計できても正確に 作らなければ、合成がうまくいきません。
 本研究では減算型フィルタを 用いることでこの合成を行ない、十分な性能を得ています。 Fig.5 にそれぞれのジャイロ(カーナビ用:ENV、カメラ用:ENC)と 合成出力の周波数特性、Fig.6 にそれぞれのドリフトの 様子を示します。これらの結果から、2つのジャイロを合成して 安定した、応答範囲の十分な角速度信号が得られることがわかります。 われわれは、ジャイロと合成回路を含めて合成ジャイロ(Composite gyro) と呼んでいます。

傾斜計とジャイロの合成

 ジャイロ2個が合成できるようにジャイロの出力を積分してから 傾斜計の信号と合成することで、さらに安定した、応答性のある 信号が得られるのでは、と考えられます。実際に計算機に 信号を取り込み、積分、減算型フィルタをもちいることで、 目的の信号は得られました。
 倒立振子の制御のように、姿勢角がゼロになるように 制御されるものについては、ジャイロの信号にハイパス フィルタをかけ、ドリフト成分を除去することで、 安定に制御できることが、郷古により確認されていますが、 傾いた状態で静止するような用途においては、傾斜計の 信号が有効であることが示されています。

関連項目


本ページの内容に関する質問等は
  kumagai@emura.mech.tohoku.ac.jp
で随時うけつけています。